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2023年度魚類学会シンポジウム
2023年度日本魚類学会年会では,以下の2題のシンポジウムを開催します.2題いずれも,年会の研究発表には参加せずシンポジウムにのみ参加する場合の参加費は無料です.多くの方々のご出席を期待しています.※開催時間と会場の詳細は当ページとプログラムに記載します.プログラムは7月下旬に「2023年度開催のお知らせ」のページに掲載予定です.

 
シーボルト魚類標本と江戸参府紀行
日時:
2023年9月4日(月)10時00分―15時00分
場所:
長崎大学文教キャンパス
対象:
魚類学会員であるかどうかによらずご参加いただけます.
コンビーナー:
藤田朝彦(環境省)・川瀬成吾(琵琶湖博物館)・細谷和海(近畿大学)
連絡先:
藤田朝彦(環境省 中部地方環境事務所 野生生物課;TEL: 090-3651-4652;e-mail: yamanakahaya@hotmail.com)

 
【シンポジウムの趣旨】
 フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold, 1796ー1866)の名前と偉業は,魚類研究者であれば耳にしたことがあるだろう.彼はオランダから江戸時代末期に医師として派遣され,長崎に鳴滝塾を開設し,鎖国で閉ざされていた日本に西洋の優れた医療技術を数多くもたらしたことでよく知られている.また,日本の文化や自然に強い関心があることから,オランダ政府から学術調査の命を受け,魚類標本を含めありとあらゆるものをオランダに持ち帰っていることが『江戸参府紀行』において克明に記録されている.当時彼はまだ30才の若者であり,オランダに帰国後,『日本動物誌』出版を成し遂げた偉業は驚きである.シーボルトが収集した動物標本資料の大半は,現在,ライデンにある生物多様性センター・ナチュラリス(旧オランダ国立自然史博物館)に厳重に保管されており,これらは日本人にとっていずれも貴重な知的財産である.
 これまでのシーボルト研究は,主にシーボルト自身にまつわる文化・歴史的分野と,彼が収集した生物種のタイプ標本を照合する分類学的分野にエネルギーが注がれてきた.また,シーボルトがオランダに帰った後,日本は明治維新を皮切りに,近代化へと突き進んで行った.その代償として日本の自然環境は著しく損なわれ,日本らしさが褪せていった.その傾向は小川や池といった身近な水辺において顕著である.シーボルト淡水魚コレクションは,約200年前の長崎から江戸に向けた将軍に拝謁するために上京した「江戸参府」の道程において収集された標本で構成されており,当時の水辺環境を現在に伝えるもっとも古い資料ともいえる.
 しかし,シーボルトが収集した標本は,未だ十分な調査・検証はなされておらず,課題も山積みしている.むしろ,生物多様性の重要性やその理解が深まるにつれて,その価値は年々増大している.シーボルト標本の概要とその重要性について,演者らは「シーボルトが見た水辺の原風景」として,現在の知見をまとめた.その上で,我々はさらにシーボルト標本の重要性や,更なる情報および課題が明らかとなった.本シンポジウムでは,これらシーボルト・コレクションの魚類学上の重要性,分類学,保全生物学上の価値を改めて紹介するとともに,それらに残される課題と今後の活用についても議論したい.
 
【プログラム】

第一部 趣旨説明

1. 10:00~10:30
シーボルト・コレクションの研究史
細谷和海(近畿大学名誉教授)

第二部

1. 10:30~10:50
江戸参府の行程
朝井俊亘(京都産業大学附属高校)
2. 10:50~11:10
シーボルトの淡水魚収集
川瀬成吾(琵琶湖博物館)
3. 11:10~11:30
シーボルトによる気象観測
財城真寿美(成蹊大学経済学部)
4. 11:30~11:50
シーボルト・コレクションが日本産淡水魚の分類に与える影響
藤田朝彦(環境省中部地方環境事務所)
5. 11:50~12:10
日本動物誌における魚類図版の問題点Ⅰ:オイカワに見られるカワムツの特徴
井藤大樹(徳島県立博物館)
  12:10~13:00
休憩
6. 13:00~13:20
日本動物誌における魚類図版の問題点Ⅱ:カネヒラに見られるカゼトゲタナゴの特徴
森宗智彦(自然環境研究センター)
7. 13:20~13:40
シーボルトの金魚
根來 央(金魚研究家)
8. 13:40~14:00
シーボルト・コレクションの模式産地を兵站(ロジスティックス)から推理する
新村安雄(リバーリバイバル研究所)

第三部 総合討論 14:00~15:00

 

 
名古屋議定書の基礎と近年の動向を魚類学研究の視点で考える
日時:
2023年9月4日(月)9時30分―12時50分
場所:
長崎大学文教キャンパス
対象:
魚類学会員のみご参加いただけます.
コンビーナー:
日本魚類学会ABS対策チーム
連絡先:
日本魚類学会ABS対策チーム(e-mail: isjabsteam@googlegroups.com)

 
【シンポジウムの趣旨】
 生物多様性条約では「遺伝資源の取得の機会、およびその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」(ABS)を目的のひとつとしており,その実効性を高めるための名古屋議定書が2014年10月12日に発効した.日本も2017年8月20日から名古屋議定書の締約国となり,国内措置である「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(ABS指針)」が施行されている.海外の遺伝資源を用いる研究において,このABSに対応するために研究の遅延や忌避が生じているが,遺伝資源提供国の法令を順守することは避けて通れない.
 日本魚類学会では,2015年度年会にて「生物多様性と名古屋議定書に係るABS対策フォーラム 法的確実性をもって遺伝資源を利用するために今なにをするべきか?」を開催し会員への周知・啓発を行った.それから8年が経過して新しく入会した会員の割合も増加している.また,ABSに関心がある会員とそうでない会員の意識・知識の差が拡大している状況にある.
 そこで,本シンポジウムではABSの基礎からデジタル配列情報や日本の提供国としての立場に関する議論などの近年の動向の紹介や,実際に提供国とPIC(事前の情報による同意)を取得した会員の体験談などの情報を提供し,会員がABSと適切に向き合い,不注意等によって不利益を被らないようにするための議論の場を提供したい.

 
【プログラム】
1. 9:30~9:35
開催趣旨説明
2. 9:35~11:00
海外からの研究用生物試料を利用する場合の注意点―名古屋議定書とABSを中心に―
鈴木睦昭(国立遺伝研究所 ABS学術対策チーム)
  11:00~11:10
休憩
3. 11:10~11:25
日本魚類学会ABS対策チームのこれまでの活動および学会員へのお願い
中江雅典・本村浩之・昆 健志・千葉 悟(日本魚類学会ABS対策チーム)
4. 11:25~11:40
フィリピンのパラワン州におけるABS関連手続きの実例
前田 健(OIST)
5. 11:40~11:55
フィリピン パナイ島における魚類多様性調査を目的としたABS関連手続きの実例
武藤望生(北里大海洋生命)
6. 11:55~12:10
韓国でのハゼ類調査およびマレーシアでの魚類相調査におけるABS関連手続きの実例
中江雅典(国立科博)
7. 12:10~12:25
IRへの投稿原稿におけるABS問題
小北智之(日本魚類学会編集委員長)
8. 12:25~12:50
パネルディスカッション「ABSの順守を前提として魚類学研究をどう進めるか」・全体質疑