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標準和名検討委員会の
概要
 
提案書・意見書  
意見募集  
標準和名の改名
について
 
魚類の
新標準和名候補名の
公表前流布行為の
抑制に関する提言
 
魚類の標準和名の
命名ガイドラインに
ついて(答申)
 
標準和名検討委員会  
 
【要   綱】
   標準和名は、日本において学名の代わりに用いられる生物の名称であり、発音がしやすいこと、意味を容易に理解できること、記憶しやすいことなど、一般的になじみがない学名の短所を補う便利なものとして、対象とする生物やその関連分野の研究の進歩や普及、教育に大きく貢献してきた。このように標準和名は、社会の様々な分野で使用されてこそ意味を持つものであり、それゆえ万人に受け入れられることが強く望まれる。標準和名には普及と安定が求められているのである。

 ところが今日にいたるまで命名についての明文化された規則がないため、新しい名称の提唱、同名や異名の処理、改称といった行為は慣習によって行われているにすぎず、しばしば問題の合理的な解決を困難にしている。しかし一方では、流通上の名称について関連省庁が委員会を設置したり、差別的な名称の取り扱いをめぐって関連学会が独自の対応を開始するなどの動きが活発化しており、標準和名をとりまく社会情勢は急速に変化しつつある。

 そこで魚類の標準和名に関わる諸問題を検討し、解決のために必要な活動を行うため、日本魚類学会に標準和名検討委員会を設置する。
【標準和名検討委員会の役割】
 
  1. 魚類の標準和名に関する諸問題を検討し、必要な提言を行うとともに、命名や問題解決のためのガイドライン、諸規則等の策定を目指す。
  2. 関連学協会や諸機関等と連携をとり、問題を共有し、解決のための諸活動を展開する。
【標準和名検討委員会の組織】
 
  1. 本委員会は委員長、副委員長、および委員若干名から構成される。
  2. 本委員会の委員長、副委員長および委員の交代あるいは補充については委員会での協議によって決定し、理事会による承認を得る。
この要綱は2017年9月15日より施行する。
標準和名検討委員会組織
委員長: 瀬能 宏
副委員長: 佐藤陽一
委員: 坂本一男,佐々木邦夫,本村浩之,日比野友亮
標準和名問題をめぐる動き
1905. 6.15 「鱗翅類の和名に対する卑見」(名和昆虫研究所編集部編、「日本鱗翅類汎論」、名和昆虫研究所、岐阜市、pp. 5-10)で長野菊次郎は和名の命名法について初めて言及し、これが近代的和名の原型となる
1905. 9 「昆虫和名私見」(博物之友, (28): 250-256)で矢野宗幹は和名の命名法について言及
1915 「学名および和名に関する卑見」(動物学雑誌, (326): 636-640)で田中茂穂は魚類の標準和名を選定するための4つの基準を提案
1934. 2 「和名問題に関する私見」(昆虫界、2(7): 36-40)で江崎悌三はいわゆる和名制限論を展開
1939.12. 1 「動物の和名に就いて」(植物及び動物、7巻12号)で田中茂穂は標準和名の概念や命名の基準について述べる
1955 1955年度日本鱗翅学会シンポジウム「和名について」が開催される
1994. 7.25 「動物分類名の表記に関する論議_食肉目か,ネコ目か」(Proc. Japan. Soc. Syst. Zool., (51): 69-72)で青木淳一は文部省の「学術用語集動物学編」で採用された仮名書き和名について議論
1995. 9.26 1995年度日本魚類学会シンポジウム「魚名に関する諸問題」で瀬能 宏は標準和名が抱える様々な問題点を指摘し、命名に関するガイドラインを学会レベルで起案するよう主張
1997 「ムラサキイガイかチレニアガイか_動物和名選定のケーススタディ」(Sessile Organisms, 13(2): 1-6)で西川輝昭は和名問題を解決するための客観的ルール作りの必要性を否定
1999. 7.14 日本昆虫学会は差別用語を用いた昆虫和名の扱いに関するワーキンググループを設置することを承認
1999.10.15    「分類」(新飼育ハンドブック水族館編 3、日本動物園水族館協会)で内田紘臣は標準和名の命名法について詳細な指針を提示
1999.12.25 「差別用語を用いた昆虫和名の扱いに関する要望」を日本昆虫学会ならびに日本応用動物昆虫学会が連名で提出
2000 「メクラカメムシの代替名「カスミカメムシ」の提唱」(植物防疫, 54: 295-296)で宮本正一・安永智秀・友國雅章・林 正美は形態学的に不合理な名称としてメクラカメムシをカスミカメムシに改称。ただし、差別的表現のことには一切触れず。
2000. 3.31 「和名に対する考え方」(爬虫両棲類学会報, 2000(1): 36-39)で千石正一は適切な標準和名や命名法について論考
2000. 6.21 徳島県立博物館が「差別的生物名称の使用についてのアンケート」を自然史系博物館、水族館、動物園を対象に実施
2000. 7.17 日本爬虫両棲類学会は標準和名選定委員会を発足し、混乱している日本産爬虫両棲類の標準和名の選定作業を開始
2000. 9.24 「和名と差別語狩り(1)」(東京蜘蛛談話会通信, (100): 16-18)で平松毅久は差別的表現を含む和名の改称を批判
2000.10. 9 日本魚類学会公開シンポジウム「魚の和名を考える_差別的名称をどうするか」が開催される
2000.10.10 「本邦爬虫両棲類和名考」(爬虫両棲類学会報, 2000(2): 99-111)で疋田 努は標準和名の命名法等、全般について論考
2000.11 「差別的表現のある和名に関する改訂の提言」(双翅目談話会はなあぶ, (10): 107)で大石久志・米津 晃・永冨 昭は差別的表現を含むメクラアブの名称をハネモンアブに改称
2001. 9. 8 「博物館等における差別的生物名称の使用に関するアンケート報告書」を徳島県立博物館は関係博物館、水族館、動物園、植物園に配布
2002. 3 「和名と亜種和名についての一提案」(月刊むし, (373): 36-37)で今坂正一は亜種の和名についてルール作りを提案
2002. 3.31 「博物館における生物の差別的名称の使用_アンケート調査から_」(徳島博物館研究会編、地域に生きる博物館、教育出版センター、徳島市)で佐藤陽一は徳島県博が実施した標記のアンケート調査結果について詳述
2002. 6.30 「差別表現問題と哺乳類の和名」(哺乳類科学, 42(1): 79-83)で遠藤秀紀は差別的表現を含む和名の改称を批判
2002.10. 6 日本爬虫両棲類学会は日本産爬虫両棲類標準和名を2002年度総会にて承認
2002.10.11 2002年度日本魚類学会第1回評議員総会で瀬能 宏は「日本魚類学会標準和名検討委員会(案)」の趣旨説明を行う(非公開)
2002.10.17 日本動物園水族館協会の動物名検討委員会で桜井 博は「魚類の和名問題に関する提言」の趣旨説明を行う(非公開)
2002.11 「魚介類の表示名称の取り扱い(中間とりまとめ案)」で水産庁は水産物の名称に原則として標準和名の使用を提案
2002.11.20 「魚の困った名前_差別的和名をどうするか」(青木淳一・奥谷喬司・松浦啓一編、虫の名、貝の名、魚の名_和名にまつわる話題、東海大学出版会)で佐藤陽一は差別的名称について使用する側の立場から詳述
2002.11.20 「標準和名の安定化に向けて」(青木他編、虫の名、貝の名、魚の名_和名にまつわる話題、東海大学出版会)で瀬能 宏は標準和名の抱える様々な問題を詳述し、ガイドラインを提示するとともに魚類学会内に検討委員会の設置を提案