| 2003年11月5日 
 環境大臣 小池百合子殿
 日本魚類学会会長 松浦啓一  我が国は、生物多様性条約批准国家の責務として、新・生物多様性国家戦略を策定するなど、生物多様性保全に向けての着実な歩みを続けていることは、高く評価されるべきことと認識しております。外来種(=移入種)については、上記国家戦略の中で生物多様性に危機をもたらす3大要因のひとつに位置づけられ、標記の中間報告に述べられている外来種対策の制度化は、具体的な解決に向けての一歩として非常に重要であり、予防原則に基づいた実効性の高い内容が望まれることは当然と言えます。このような観点から、当学会は標記の中間報告に関して以下の通り具申する次第です。 
								規制対象生物の範囲生物多様性に悪影響をおよぼす可能性のある生物に遺漏なく対処すべく、すべての生物が法律の対象となることを明記すべきである。規制の対象生物や対策は予測される影響の程度によって決められるべきものであり、分類群にかかわらず臨機応変に対応できる必要があるからである。
 
 
影響予測評価の方法悪影響を与えるかどうかの予測評価は、生物多様性保全の観点から行われるべきである。予測評価に際しては、専門家個人ではなく、当該生物を含む分類群の専門家で組織される委員会もしくは関連学会に協力を要請すべきである。これにより、影響予測の客観性が保持される。
 
 
意図的導入に対する措置1)放逐や逸出等により、生物多様性に悪影響を与えると予測される外来種の導入は原則として禁止すべきである。
 
 2)導入が許可された種については、その数量やその後の流通経路を正確に把握できる制度と監視システムを構築すべきである。
 
 3)導入に関わる個人や業者、各種団体等は、生物多様性保全について相応の知識を有することが必要であり、登録・許可制とすべきである。
 
 4)不許可種の違法な持ち込みを監視するため、同定能力を有する専門家を税関等の要所に配置すべきである。
 
 
非意図的導入に対する措置随伴や混入等による非意図的導入を防止するための措置を導入に関わる個人や業者、各種団体等に義務づけ、相応した監視体制をとるべきである。
 
 
既存の外来種に対する措置既存の外来種への対応は、影響予測評価を行う上記委員会もしくは関連学会により、生物多様性保全の観点から影響の大きさを判定し、管理目標を設定し、費用対効果をも考慮に入れた迅速で合理的な対応がとれるシステムを構築すべきである。
 
 
駆除、モニタリング、研究等の財源確保駆除やその効果についてのモニタリング、外来種問題解決のための研究活動には莫大な予算が必要となる。原因者には応分の負担を求めることはもちろんであるが、国が独自の予算枠を設けるなどして、実際の任にあたる地方自治体や各種NPO、関連団体等に援助を行うべきである。
 
 
教育と普及啓発文部科学省や学校、博物館や動(植)物園・水族館といった各種教育機関と予算措置を含めての連携をとり、外来種問題についての正しい知識の普及啓発に努めるべきである。特に学校教育との連携は大きな効果が期待でき、積極的に進めるべきである。
 
 
他の関連法との関係外来種対策としての法律は、生物多様性保全の観点から運用されるべきものであり、他の関連する法律との間に整合性をとることはもちろんだが、その際に安易な妥協に陥らないよう注意する必要がある。また、そのための議論は、様々な立場から、公開で行われる必要がある。
  以上 |