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2014年度日本魚類学会年会シンポジウム
 2014年度日本魚類学会年会において開催されるシンポジウムは下記の3題です.ただし,「魚類における適応と種分化の進化遺伝機構」と「魚類における両側回遊」については,学会員のみの参加とします.会場の都合上,70名の定員制となります.応募者多数の場合は抽選とし,参加者には実行委員会から通知します.当日,席に余裕がある場合のみ,当日参加を認めますが,シンポジウムのみに参加される方には参加費2,000円が必要となります.参加を希望される方は,年会申込時に参加シンポジウムを選択してください.定員から外れ,当日のお弁当を申し込まれていた方には,受付時に実行委員会から弁当代を返金いたします.「日本の外来魚問題の現状を考える」については事前の申し込みは不要です.ただし,シンポジウムのみに参加される会員の方,ならびに一般の参加者の方には参加費2,000円が必要となります.  
   
魚類における適応と種分化の進化遺伝機構:研究最前線と今後の展望
Evolutionary genetic mechanisms of adaptation and speciation in fishes: frontiers of research and future perspective


日 時: 11月17日(月)
場 所: 神奈川県立 生命の星・地球博物館 東側講義室
参加資格・定員: 学会員のみ・70名
コンビーナー: 小北智之(福井県立大)・渡辺勝敏(京大院理)
連絡先: 小北智之
(〒917-0003 福井県小浜市学園町1-1  福井県立大学海洋生物資源学部
Tel:0770-52-6300; Fax:0770-52-6003; E-mail:kokita@fpu.ac.jp

プログラム
 1. 9:00-9:05 開催趣旨説明
○小北智之(福井県立大)
第一部 表現型変異を遺伝的変異へつなぐ方法論
 2. 9:05-9:40 連鎖および連鎖不平衡マッピングによる表現型原因遺伝子の同定
○菊池潔(東大水実)
第二部 進化学的モデル魚類を用いた適応と種分化研究
3. 9:40-10:10 シクリッドにおける唇の肥大化の平行進化に関わる遺伝的基盤
○二階堂雅人(東工大)
4. 10:10-10:40 シクリッドの色彩遺伝子の探索
○高橋鉄美(遺伝研)
  (休憩)
5. 10:50-11:20  メダカ野生集団における性的二型の多様性をもたらす発生曲線の進化
○川尻舞子(遺伝研)
6. 11:20-11:50 行動生態ゲノミクス:イトヨ類における雄繁殖戦略の進化遺伝基盤
○小北智之(福井県立大)
7. 11:50-12:20 イトヨ集団間におけるDHA合成能の変異と淡水進出能
○石川麻乃(遺伝研)
  (昼食休憩)
8. 13:00-13:30 メダカ近縁種における性決定遺伝子の多様化機構
○竹花佑介(基生研)
9. 13:30-14:00 トラフグ属魚類の表現型とゲノムの多様性
○細谷将(東大水実)
10. 14:00-14:30 Genomic islands: 種分化の際にゲノムに出現する種形成の責任領域
○寺井洋平(総研大)
11. 14:30-15:00 トゲウオ科魚類イトヨにおける雑種不稔の原因遺伝子の探索
○吉田恒太(遺伝研)
    (休憩)
第三部 非モデル魚類への展開も含めた今後の研究展望
12. 15:10-15:35 日本の古代湖「琵琶湖」における固有魚類群集の起源と適応
○渡辺勝敏(京大院理)
13. 15:35-16:00 非モデル魚におけるゲノム解読の現状
○斉藤憲治(中央水研)
14. 16:00-16:25 魚類の適応と種分化研究における今後の展開
○北野潤(遺伝研)
15. 16:25-17:00 総合討論・コメント等
   
[シンポジウムの趣旨]
 魚類における高い種多様性,及び,形態・生態・行動の著しい多様性には目を見張るものがある.魚類学会の会員の中には,様々なレベルでの多様性の記載を研究テーマとされている方も少なくないであろう.しかし,その一方で,このような多様性が創出されるメカニズムに関しては,未だ十分に解明されているとは言い難い.これまで,多様性の原動力となる適応と種分化の進化生態学的研究はさかんに実施されてきた一方,多様性創出の遺伝基盤に関しては,ほとんどの場合,ブラックボックスのままである.適応や種分化現象をその背景となるDNAの塩基配列の違いに還元することができれば,これまで想定されていなかったような進化機構の発見とともに,詳細な集団遺伝学的解析や生態・進化実験の適用により,これまでにない高い検証度での研究が可能となるだろう.近年の次世代シーケンサーの普及によるゲノム科学的手法の発展,ゲノム編集といった逆遺伝学的手法の台頭により,魚類を含めた野生生物の多様性研究は新しい時代を迎えようとしている.本シンポジウムでは,トゲウオ類,シクリッド類,メダカ類,フグ類といった進化学的モデル魚類を用いて,この分野の最前線で研究する日本人研究者が会し,適応と種分化の進化遺伝機構に関する最新の研究成果を紹介する.さらに,今後,ますます研究の重要性と実現可能性が高まると予測される多様な非モデル魚類への展開も含めて,魚類の適応と種分化研究の今後の展望を議論したい.
 

   
魚類における両側回遊:その生活史多様性と進化
Amphidromy in fishes: its life-history diversification and evolution


日 時: 11月17日(月)
場 所: 神奈川県立 生命の星・地球博物館 西側講義室
参加資格・定員: 学会員のみ・70名
コンビーナー: 渡邊 俊(日本大学生物資源科学部)・井口 恵一朗(長崎大学環境科学部)・後藤 晃(北の川魚研究所)
連絡先: 渡邊 俊
(〒252-0880 神奈川県藤沢市亀井野1866 
日本大学生物資源科学部海洋生物資源科学科ウナギ学研究室
Tel:0466-84-3683; E-mail:watanabe.shun@nihon-u.ac.jp

プログラム

 1. 9:30-9:35 はじめに
○渡邊 俊(日大生物資源)
 2. 9:35-10:05 通し回遊の起源と進化
○塚本 勝巳(日大生物資源)
【両側回遊性魚類の生活史多様性・分布・系統について】
3. 10:05-10:25 アユにみる両側回遊の多様性
○大竹 二雄(東大農)
4. 10:25-10:45 両側回遊型カジカ類およびウツセミカジカ琵琶湖個体群の回遊生態
○田原 大輔(福井県立大)
5. 10:45-11:05  ハゼ亜目における両側回遊の進化と多様化プロセス
○昆 健志(東邦大理)
  (休憩)
6. 11:20-11:40 ヨシノボリ類の回遊と陸封ー単純じゃない大卵少産と小卵多産?
○平嶋 健太郎(和歌山自然博)
7. 11:40-12:00 ウキゴリ類の生活史進化
○原田 慈雄(和歌山水試)
8. 12:00-12:20 ボウズハゼの回遊生態と熱帯性両側回遊
○飯田 碧(琉大)
9. 12:20-12:40 両側回遊のバリエーション:沖縄の川に住むハゼ亜目の事例
○前田 健(OIST)
  (昼食休憩)
【その他の淡水性両側回遊生物について】
10. 14:00-14:20 両側回遊性腹足類の自然史
○狩野 泰則(東大大気海洋研)
11. 14:20-14:40 両側回遊性エビ類の流程分布の成立要因ー小卵多産のまま最上流部まで上がる進化
○浜野 龍夫(徳島大総科)
    (休憩)
【他の通し回遊性との比較から見た両側回遊性の特性およびその変異性と進化】
12. 14:55-15:15 両側回遊性の進化プロセスと各分類群での種多様性創出
○後藤 晃(北の川魚研)
13. 15:15-15:35 緯度別から考察する淡水性両側回遊の相違点
○渡邊 俊(日大生物資源)
14. 15:35-15:55 両側回遊における系統上の制約と種内変異
○井口 恵一朗(長大院水環)
【総合討論】
15. 15:55-16:30 生活史戦略と進化プロセスから見た両側回遊性の包括的理解を求めて
○司会・進行 渡邊 俊(日大生物資源)
   
[シンポジウムの趣旨]
 サケ・マス類の母川回帰やウナギ属魚類の外洋での産卵は、古くから人々の興味をかき立ててきた。したがって、海と川を行き交う通し回遊における遡河回遊と降河回遊に関する生態学的および進化学的研究は、現在までに数多くなされている。また、それらの研究結果の比較や融合から、これら二つの回遊型に関する包括的かつ総合的な理解は得られつつある。その一方で、通し回遊のもう一つの回遊型である両側回遊は、遡河回遊と降河回遊に比べ、生活史多様性や進化過程を考察するまでには至っていないのが現状である。
 遡河回遊と降河回遊は、基本的に成育場と産卵場を海と川のそれぞれに分けている。しかし、両側回遊は、仔魚から未成魚にいたる発育段階上のある時点で生息場所を海または川に移動させて、そのまま生育・繁殖に及ぶ生活史型であり、他の二つの回遊型と異なる。淡水性両側回遊(以下、便宜的に両側回遊と呼ぶ)の代表種として、アユ、淡水性カジカ属魚類、ヨシノボリ属魚類があげられる。近年、熱帯や亜熱帯域に生息するボウズハゼ亜科やカワアナゴ科魚類の研究が進み、これらの生態学的情報が充実してきた。よって、これらの研究成果と今まで蓄積のある温帯および寒帯における両側回遊魚の知見を比較することにより、生息環境の違いにおける両側回遊の生活史戦略や回遊形質の相違を議論できることが可能となった。さらには、両側回遊が魚類の系統類縁の様々な場所から出現していることは一目瞭然であることから、現存の両側回遊魚が、なぜ祖先が採用していた生活史よりも両側回遊の方が適応上の利点を持ち得たのかを考察することも分類群によって可能であろう。そこで、両側回遊にて初めて、それぞれの集団や種のみによる独自性と、その集団や種を超えた共通点を議論し合えるスタートラインへ辿り着いたと考えた。
 本シンポジウムでは、両側回遊を行う各分類群の生活史を理解し、それぞれの特殊性について考えたい。次に、各々の起源と進化に着目し、適応の産物として進化的収斂が生じて両側回遊になったことを確認し、その共通点であろう選択圧もしくは選択圧にさらされた形質が何であるかに迫りたい。さらには、両側回遊性生物の生態系での機能についても議論する。以上から、両側回遊について分類群を越えた包括的理解を得たい。
 

   
日本の外来魚問題の現状を考える:外来生物法制定から10年で何が変わったのか?
Recent status and problems of invasive alien fishes in Japan: What has changed in the 10 years since the enactment of the Invasive Alien Species Act?


日 時: 11月17日(月)
場 所: 神奈川県立 生命の星・地球博物館 SEISAミュージアムシアター(第1会場)
参加資格・定員: 一般公開・定員なし
コンビーナー: 向井貴彦(岐阜大地域)・淀 太我(三重大院生物資源)・中井克樹(琵琶湖博)・瀬能 宏(神奈川県博)
連絡先: 向井貴彦(〒501-1193 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学地域科学部
Tel:058-293-3027; Fax:058-293-3008; E-mail:tmukai@gifu-u.ac.jp

プログラム
 1. 13:00-13:20 わが国の外来種対策の現状:「愛知目標」の達成に向けて
○立田理一郎(環境省自然環境局外来生物対策室)
 2. 13:20-13:40 全国スケールでみた外来魚の侵入が在来魚の多様性に与える影響
○松崎慎一郎(国立環境研)
3. 13:40-14:00 止まらないブラックバスの違法放流
○宮崎佑介・瀬能 宏(神奈川県博)
4. 14:00-14:20 “フロリダバス”の拡散,増加
○北川忠生(近大農)・淀 太我(三重大院生物資源)
  (休憩)
5. 14:25-14:45  駆除の実践と成果の現状1 伊豆沼
○藤本泰文・芦澤淳(伊豆沼財団)・高橋清孝(シナイモツゴ郷の会)
6. 14:45-15:05 駆除の実践と成果の現状2 深泥池
○竹門康弘(京大防災研)・安部倉完(京大工)
7. 15:05-15:25 長野県の3湖沼におけるオオクチバス完全駆除の試み
○片野 修(増養殖研)
8. 15:25-15:45 霞ヶ浦におけるチャネルキャットフィッシュの生態と被害事例
○荒山和則(茨城県漁政課)・半澤浩美(茨城県水試)・亀井涼平(東京海洋大海洋科学)・加納光樹(茨城大広域水圏セ)
9. 15:45-16:05 カダヤシの放流実態と試行的対策:徳島県を中心として
○田代優秋((社)地域資源研究センター)・佐藤陽一(徳島県博)・上月康則(徳島大院ソシオテクノサイエンス)
    (休憩)
10. 16:10-16:30 サケ科魚類における外来魚問題~北海道と本州の比較~
○長谷川 功(北水研)・坪井潤一(増養殖研)・長瀬崇(宮川下流漁協)
11. 16:30-16:50 国内外来種問題
○向井貴彦(岐阜大地域)
12. 16:50-17:10 魚類の外来種対策の現状と課題
○中井克樹(琵琶湖博)
13. 17:10-17:30 総合質疑
   
[シンポジウムの趣旨]
 外来種は生態系に大きな変化を引き起こし,農林水産業に多大な被害をもたらすとともに,地域在来の生物の局所絶滅などの不可逆的な変化の原因となることから、外来種問題の重大さは社会的に広く認識されつつある.日本国内では,2004年に外来生物法が制定され,特定外来生物として指定された生物の輸入・飼育・販売・野外に放つことなどが厳しく禁じられるようになった.また,2010年に愛知県・名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)においても主要な課題の一つとして外来種対策が検討され,国や自治体による外来種防除事業も進められている.
 魚類については,オオクチバスやチャネルキャットフィッシュなど8種が特定外来生物に指定されて10年が経とうとしている.外来生物法の施行によって,これらの外来魚による問題は改善されつつあるのだろうか? また,外来生物法で指定されていない外来魚も広がり続けている.水産利用の盛んなサケ科魚類やコイ科魚類の国内外を起源とする外来種の問題や,国内外来魚による在来個体群の遺伝的攪乱についても,現状の解明と保全策の提案が必要だろう.
 そこで,本シンポジウムでは,外来生物法施行後の外来魚対策の現状と問題点を概観するとともに,今後の対策が必要な外来魚についての研究事例を紹介し,自然環境保全のための議論の場を提供したい.